かつて日本で売れ筋モデルだったコンパクトカーは、すっかり軽自動車にその座を奪われてしまいました。
ここ30年で消えてしまったモデルも多く、昔を知る人には寂しさを感じさせる現実です。
しかし、そのような時代だからこそコンパクトカーのメリットを考え、軽自動車よりオススメなモデルを解説します。
今こそ考えるコンパクトカーのメリット
コンパクトカーには明確な定義はないにせよ、おもに5ナンバーサイズに収まる排気量1.0L~1.5Lのモデルが該当します。
いまあえてコンパクトカーに乗るべき理由について、主に軽自動車との対比で考えてみましょう。
軽自動車とは段違いなエンジンの余裕
軽自動車には排気量660cc以下という制約があるので、どう頑張ったところでエンジン性能には限界があります。
もちろん昔流行ったような超高回転型エンジンにすれば高出力化は可能ですが、そんなエンジンは日常使いには向きません。
軽自動車のドライブで不満を覚えるのは、たいてい高速道路や山道の登りを走行しているときのパワー不足に対してです。
それに比べればコンパクトカーのエンジンには余裕があり、乗り比べてみると違い簡単に分かります。
安全性でもコンパクトカーがオススメ
軽自動車とコンパクトカーを比較したときに差がでるポイントは、衝突安全性に関してではないでしょうか。
最近の軽自動車も安全性能は大きく向上したのですが、国産乗用車の安全性評価は独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA)が定めている衝突試験で数値化されています。
実はここに「闇」が存在していて、以下の4種類の試験のうち「後面衝突頚部保護性能試験」が変だと思わないでしょうか。
- フルラップ前面衝突試験 ・・・ 55km/hでコンクリートの壁に正面衝突させる
- オフセット前面衝突試験 ・・・ 64km/hで車体の右側40%のみをアルミに衝突させる
- 側面衝突試験 ・・・ 静止状態の被試験車両に、950kgの台車を55km/hで側面(運転席側のBピラー付近)に衝突させる
- 後面衝突頚部保護性能試験 ・・・ 静止状態の被試験車両へ同重量の車両を36.4km/hで追突させ、被試験車両を17.6km/hで前方に押し出す
「同重量を衝突させる」ということは、軽自動車なら軽自動車が追突したケースしか想定しないということです。
しかも、この後方衝突については実車を模擬した装置を使用していて、本当に事故が発生したときの被害状況は確認できません。
また試験内容は頚部保護性能試験とされ、基本的に試験対象は運転席(助手席も対象にするケースもあり)となっています。
この後方からの衝突試験の緩さはホントに謎です。
つまり追突された場合の後部座席の安全性は考慮されていないことになります。
何かしらの意図を感じるのですが、物理法則からも車は大きい方が(少しだけ)安全性が上がることは間違いありません。
どうしてコンパクトカーは廃れたのか
「コンパクトカーが廃れた」というのは言い過ぎかもしれませんが、20~30年前と比べるとずいぶんとコンパクトカーの車種は少なくなりました。
それというのも小さい車の主役が軽自動車に移ったからで、品質面や機能面で追いつかれてしまったといえるでしょう。
今の普通車は3ナンバーばかりで、
コンパクトカー(5ナンバー)は絶滅危惧種ですからね🤔
そして、この狭い日本で3ナンバーに乗るのは正気の沙汰に思えないんです…
今の軽自動車は「コンパクトカーの代替品」としての役割を持ちつつあるので、
自分としては引き続き軽自動車を選びたいと思います😅 https://t.co/ys7kGGliou pic.twitter.com/M0M1xBNonH— RomラManサイ (@RomlaMansai) September 30, 2024
税金や高速道路の通行料なども、軽自動車のほうが有利なのは確かです。
軽自動車の品質向上がコンパクトカー衰退の大きな理由となっています。
いま買えるオススメのコンパクトカー6選
かつての元気を失っているコンパクトカーですが、やはり「少しでも安全」「快適なドライブ」を考えれば軽自動車より優れた選択肢です。
そこでここからは、今新車で買うことのできるコンパクトカーについて、その特徴やポイントもコンパクトにまとめて紹介します。
ちなみにスライドドアを備えたトヨタ・ルーミー&ダイハツ・トールと、そのライバル車スズキ・ソリオは別の機会に紹介することにしました。
トヨタ・ヤリス
2020年2月にデビューしたトヨタ・ヤリスは、ヴィッツの後継車種ですが海外では以前からヤリスというモデル名で販売されていました。
ヤリスは日本で一番売れているコンパクトカーで、乗り心地の良さや低燃費、それに安い価格が人気の秘密です。
サイズ感や取り回しの良さなど、初めての愛車にもオススメできるコンパクトカーです。
全長×全幅×全高 | 3,950mm×1,695mm×1,495mm |
室内長×室内幅×室内高 | 1,845mm×1,430mm×1,190mm |
ホイールベース | 2,550mm |
車両重量 | 940kg~1,180kg(フルオプション・ハイブリッド) |
エンジン | ・996~1,490cc直列3気筒ガソリン ・1,490cc直列3気筒ガソリン+ハイブリッド |
燃費(WLTCモード) | ・ガソリン車 19.0~21.3km/L ・ハイブリッド車 35.4~36.0km/L |
タイヤサイズ | 175/70R14~195/50R16 |
車両価格 | 1,501,000 円~2,694,000 円 |
日産・ノート
日産・ノートはかつてマーチが担っていた(1982年~2022年)ポジションを実質的に埋めています。
現行型ノートは2020年12月にデビューした3代目モデルで、パワートレーンはエンジンが発電しモーターで走行する「e-POWER」だけになったことが特徴です。
ワンペダル操作には賛否がありますが、慣れると戻れなくなる中毒性があるといいます。
全長×全幅×全高 | 4,045mm×1,695mm×1,520mm |
室内長×室内幅×室内高 | 2,030mm×1,445mm×1,240mm |
ホイールベース | 2,580mm |
車両重量 | 1,230kg~1,350kg(フルオプション・ハイブリッド) |
エンジン | ・1,198cc直列3気筒ガソリン(発電用) ・EM47型モーター(85kW) |
燃費(WLTCモード) | ・e-POWER 23.8(4WD)~28.4km/L |
タイヤサイズ | 185/60R16 |
車両価格 | 2,299,000 円~3,063,500 円 |
トヨタ・アクア
2011年にプリウスに続くハイブリッド専用車としてデビューしたアクアは、一時は消える運命にあったモデルです。
それはハイブリッド車が珍しいものではなくなったからで、ヤリスと統合される案もありました。
しかし無事(?)に2代目へ進化し(2021年7月)、ヤリスより丸みを帯びたデザインとシンプルかつ上質なインテリアが特徴です。
全長×全幅×全高 | 4,050mm×1,695mm×1,485mm |
室内長×室内幅×室内高 | 1,830mm×1,430mm×1,190mm |
ホイールベース | 2,600mm |
車両重量 | 1,120kg~1,150kg |
エンジン | ・1,490cc直列3気筒ガソリン+ハイブリッド |
燃費(WLTCモード) | ・ハイブリッド車 29.3~34.6km/L |
タイヤサイズ | 185/65R15~205/45R17 |
車両価格 | 2,146,000 円~2,837,000 円 |
ホンダ・フィット
初代フィットは、優れた低燃費とセンタータンクレイアウトによる優れたパッケージングで、超が付くほど激売れした革命的コンパクトカーでした。
あれから時代は流れ4代目となったフィットは、かつてほど売れなくなりましたが、非常に良い車なのに残念なことです。
全長×全幅×全高 | 3,995mm×1,695mm×1,540mm |
室内長×室内幅×室内高 | 1,955mm×1,445mm×1,260mm |
ホイールベース | 2,530mm |
車両重量 | 1,100kg~1,270kg(フルオプション・ハイブリッド) |
エンジン | ・1,496cc直列4気筒ガソリン ・1,496cc直列4気筒ガソリン+ハイブリッド |
燃費(WLTCモード) | ・ガソリン車 16.0~18.7km/L ・ハイブリッド車 23.5~30.2km/L |
タイヤサイズ | 185/60R15~185/55R16 |
車両価格 | 1,720,400 円~2,846,800 円 |
スズキ・スイフト
2000年に初代モデルがデビューしたスイフトは、スズキらしい「安さ」を強調したコンパクトカーでした。
現行型は2023年に登場した5代目モデルですが、キビキビしたスポーティーな走りが売りで、決して上質さを求めてはいけません。
それを理解して乗るのであれば非常にコストパフォーマンスの高い1台です。
全長×全幅×全高 | 3,860mm×1,695mm×1,500mm |
室内長×室内幅×室内高 | 1,905mm×1,425mm×1,225mm |
ホイールベース | 2,450mm |
車両重量 | 950kg |
エンジン | ・1,197cc直列3気筒ガソリン+ハイブリッド |
燃費(WLTCモード) | ・ハイブリッド車 24.5km/L |
タイヤサイズ | 185/55R16 |
車両価格 | 2,167,000 円~2,399,100 円 |
マツダ・MAZDA2
MAZDA2は大ヒット作デミオの後釜として、多くの人が知らないうちに居座っていたモデルです。
ちなみにMAZDA2は2024年9月で生産を終了しており、無理して追うのは止めた方がよいでしょう。
このモデル最大の特徴は、コンパクトカーでは珍しいディーゼルエンジンがあることですが、生産を終了してことを考えると微妙なところです。
全長×全幅×全高 | 4,080mm×1,695mm×1,525mm |
室内長×室内幅×室内高 | 1,805mm×1,445mm×1,210mm |
ホイールベース | 2,570mm |
車両重量 | 1,040kg~1,160kg |
エンジン | ・1,496cc直列4気筒ガソリン ・1,498cc直列4気筒ディーゼルターボ |
燃費(WLTCモード) | ・ガソリン車 18.1~20.3km/L ・ディーゼル車 21.9~24.2km/L |
タイヤサイズ | 185/65R15~195/55R16 |
車両価格 | 1,548,800 円~2,303,400 円 |
何を重視するかで決まるコンパクトカーの選択
一部を除いて今でも購入できる国産コンパクトカーを紹介してきましたが、ここから目的別のベストをチョイスします。
かつてほどの選択肢がなくなっているコンパクトカーでも、自身や大事な人の安全を考えれば選ぶべき選択肢です。
経済性を重視する場合のオススメ
コンパクトカーに求められるものは昔から経済性でしたが、その点を考慮したコンパクトカーのベストバイは以下の3車種です。
- ヤリス
- フィット
- アクア
全ての面においてヤリスのコスパは他の追随を許さないほど優れていて、その結果が売上台数に表れています。
コンパクトカーの本分である経済性や、セカンドカー需要に耐えられる実力を秘めているのがヤリスです。
実用性の高さを求めるならコレ!
コンパクトカーであっても実用性の高さは大事な要素で、むしろセカンドカーなど持てません・・・という方には見逃せないポイントです。
- フィット
- ヤリス
- アクア
ホンダ・フィットは、センタータンクレイアウトという特許技術を握っていて、その強みがフィットのクラスを超えた室内空間の広さです。
意外とありがちなのが「もう少し広かったら良かったのに」というシチュエーションで、そんな場面でこそフィットの良さが実感できるでしょう。
運転することを楽しむならコレ!
その昔のコンパクトカーは、若者にアピールすることが第一であり走りの良さこそが正義でした。
ちょっとだけ昔話をすれば、スターレットターボやマーチスーパーターボなど、魅力あふれる夢のような時代でした。
- スイフト
- MAZDA2
- ノート
運転を楽しむというのは人それぞれかもしれませんが、これらのモデルには独特の楽しさがあります。
もちろんGRヤリスなど掟破りのモデルが存在していても、レギュラーメニュー以外は省いておきます。
コンパクトカーを経て行く先
その昔は最初に乗る車としてポピュラーだったコンパクトカーですが、当時そんなチョイスをした人の次の選択は大きく2つに分かれました。
バブル期に車を手に入れた人の多くは「もっと排気量の大きい車に乗りたい」と思ったものです。
バブル期の若者は車が大好きで、車をアップグレードする人が多かったですよね。だから選択のほとんどは上を目指していました。
今でも自動車税の区切りで1.5リッターというのが壁になっていますが、当時のコンパクトカーでは1.5リッターモデルと1.6リッターモデルの両方が用意されているのが一般的でした。
たった100ccの違いでもモデルの差は大きく、バブル期に大人気となったホンダ・インテグラは伝説のVTECは1.6リッターモデルのみの特典だったのです。
今でこそ人生を豊かにする支出部門で車の価値は下がりましたが、より上を目指そうというマインドは成長のための試金石・・・だったと思います。
まとめ
とりあえず車は動きさえすればイイと思っている方も、軽自動車以外の選択肢も調べた方が結果的にお得になります。
安全面のアドバンテージでも軽自動車よりコンパクトカーの方が安全で、是非とも選択肢に加えて欲しいと思うのは完全に私の老婆心です。
ただ、助手席との近さを優先するなら軽自動車を否定しませんよ。