日本でEVが普及しないのはなぜ?当然の理由について考えてみよう

少なくとも日本のネット界隈を見るかぎりEV懐疑派、あるいはEV嫌厭派が多いのが現実です。
今となってみれば「でしたよね」といった状況になっているわけで、そんな人たちが多かったからなのか日本のEV普及率は低迷しています。
この現象を「EVオワコン説」で語ってはイマイチ真実が見えてこないので、この記事では日本でEVが普及しない理由からEVの未来を予測してみます。

目次

ほとんどの日本人がEVを敬遠しているシンプルな理由

普及しないEV

日本の新車販売(普通乗用車)に占めるEVの割合は、2023年で1.66%だったようで(日本自動車販売協会連合会の発表)、これをどう捉えるかは意見が分かれます。
私の体感的には「1.66%も普及していたのか?」と思えますが、100人に1人か2人のアーリーアダプターが日本にもいたということです。
まずは脱炭素とかいう高尚な話はさて置いて、日本人がEVに飛びつかない理由をシンプルに検証してみましょう。

貧乏になった日本人には高価すぎるEV

EVが普及しない理由の一つが「単純に高いという単純なもので、日本人の可処分所得が減り続けるなか高くて買えません。
現実的な選択肢として考えられる安いEVといえば、三菱のeKクロスEV Gか日産のサクラになるのですが、それでも250万円を超える車両本体価格です。

収入が増えないだけじゃなく、使える金額も減っているからね。

もちろんEVを買うための助成金はあるのですが、そんな助成金で無理にEVを普及させようという政治的な試みはEUでも破綻しかけています。
EVが日本で普及しない一番の理由は、国民生活に余裕がなく貧乏になっているからです。

避けては通れない充電場所不足

日本でEVが普及しない理由としてよく語られているのが「充電スポットの絶望的な不足」です。
内燃機関の車であれば少なくなったとはいえ、あちこちに存在しているガソリンスタンドで給油できます。
そんなことが可能なのは、ガソリンスタンドが燃料を売ることによる利益で商売が成り立っているからです。

そのガソリンスタンドも30年間で半減し、今では約2万7千軒ほどになりました。

それに対し全国にある充電スポットでは採算無視の事業所があるようで、それに対して公正取引委員会が意見を述べたと報じられています。
公正取引委員会が調査した結果、利用料金を自治体が設定するEV充電器706口のうち、約8割にあたる556口が、無料または有料ではあるが赤字の料金設定であることが分かったと報じられました。
これは地方自治体が「EVの普及促進のため」という言い訳をしていて、国(経済産業省主導)の政策を盲目的に追従している地方自治に無能さの現われです。

実際のところ充電スポットが増えないのは、充電スポット経営が黒字を生まないからで、経産省ごり押しの普通充電ステーションの提供企業「ENECHANGE(エネチェンジ・東証グロース)」が債務超過に陥ったのを見ても明らかでしょう。
充電したくても充電できないEVを誰が買うでしょうか?EV普及などは時期尚早の絵に描いた餅でした。

約30分も必要な急速充電

車というものは本来普通の生活に便利をもたらすもので、それゆえに世界中で普及してきました。
普通の内燃機関で走る車であれば、燃料の残量が少なくなればガソリンスタンドへ行き数分で給油することができます。
ところがEVであれば急速充電器を利用しても30分の時間を要し、しかも燃料補充のように100%まで充電できません。

https://twitter.com/yoi_hibino/status/1640535069843656705

こんな不便を強いられるEVで、少なくともレジャーに出かけようと思うでしょうか?それが大きな答えです。

航続距離と夏冬の不安

内燃機関の車であれば動力を電力に変えながらエアコンを使用し、冬であればエンジンの余熱を暖房に利用できました。
しかしバッテリーに貯えた電気のみを使用しなければならないEVでは、冷暖房も有限な電気を消費しなければなりません。
もともと航続距離に不安のあるEVは、タウンユースでは不安はないにせよレジャー目的では常に充電を気にしなければならないストレス元となります。

実際に2024年1月、アメリカを襲った寒波によって多くのEVが立ち往生する事態となりました。

これは充電スポット不足も関係している話で、EVをストレスなく利用できるには1充電あたりの航続距離を相当延ばす必要があるでしょう。

実は政治不信が影響している可能性

一時期まで「全ての車をEVに置き換える」なんて言っていたのは、庶民の暮らしぶりなど一顧だにしない一部の政治家や、評論家・識者といった怪しい奴らでした。
2021年1月18日に当時の菅首相は「2035年までに乗用車の新車販売をすべて電動車とする」と施政方針演説で宣言しました。
これって国益や国民の暮らしなど全く関係のない、欧州初の脱炭素祭りに追従しただけのもので、無責任極まりない政策です。
また某東京都知事は「東京都は2030年に新車販売で非ガソリン車を100%にする」などと、寝ぼけたことを言っていました。

https://twitter.com/7Znv478Zu8TnSWj/status/1746522770165682506


近年政治不信が高まるなか、利権も絡んでいるであろうEVごり押し政策は、国民支持など得られなくなっており、むしろEVを敬遠する理由ともなっています。

あまりにも歪すぎる世界のEV普及

不自然なEV普及策

EVが日本で普及しない理由は分かったとして、そもそもEV100%をゴールと考えているから「日本はEVで周回遅れ」という間違った論調になるのです。
この誤ったゴールは少なくとも先進国といわれてきた国では共通なもので、それによる混乱はそれぞれ独自の展開を見せています。
そこでEVを巡る各国の普及状況と、歪さゆえ招いている混乱を確認しましょう。

EV化の旗振り役だった欧州の憂鬱

日本に住んでいる車好き視点でいえば、EUの無能首脳部のEV全振り方針のせいで個人的には大好きだったドイツのエンジン車が青息吐息となっています。
アホらしすぎる話ですが、トヨタのハイブリッド車に勝てない欧州勢は一時期まで「クリーンディーゼル」を前面に押し出していました。
これは元からノウハウがあった技術で燃費も良く、ロングドライブの多い欧州に適していたからでしょう。
ところが2015年9月、フォルクスワーゲン社によるディーゼル不正事件が明らかになり、一瞬にしてディーゼル車の信頼は地に落ちます。

ここでトヨタに頭を下げるという選択を取ることができていたらなぁ。

誇り高い白人様がアジア人にそんなことするわけないでしょ。

そこに沸き起こったのが「地球温暖化を防ごう」という奇麗事ムーブメントで、EUは一気にEVを正当化するシナリオを進めだしました。
そして2035年までに新車販売の全てをEVにすると宣言し、日本車を駆逐できる・・・と思っていたのでしょう。
しかし現実には、補助金なしではEVは売れず販売は低迷し、それどころかダンピングしまくっている中華製EVに市場を荒らされています。

https://twitter.com/kapibara19190/status/1774040894699971011

身から出た錆。これほどまでに自業自得な例は珍しいと言えるでしょう。

アメリカでは意識高い系だけだったEV推進論者

モータリゼーション発祥の地アメリカでは車での移動が基本であり、走行距離も長いのが地域的な特徴です。
そんなアメリカで誕生したEVのトップランナーがテスラですが、テスタの経営者イーロン・マスク氏はEVを販売することよりEVを梃子としたビジネスに熱心な男でした。
イーロン・マスクが未来のビジネスとしているのは「エネルギービジネス」で、エネルギー事業の消費者となるのがEVユーザーという位置付けです。

そんなアメリカでもEVは販売不振になっていて、それは至極普通の結果でした。なにせアメリカでは所得階層の上位10パーセントの世帯が国の富の66.9パーセントを保有していて(2023年第4四半期データ)、ほとんどの国民はEVなど買えもしないわけです。

意識高い系のアーリーアダプターがEVを買えば、それ以上売れなくなるは当たり前のことで、EVに大規模投資を行ったテスラ以外の自動車メーカーは地獄の様相を呈しています。
しかもアメリカ大統領はEVへの補助金を打ち切ると言っているトランプ氏が返り咲きました。
テスラ以外の自動車メーカーにとっては厳冬期が訪れるでしょう。

補助金バラマキのダンピング大国の現実

民主主義国家で生きていると肌の感覚として理解できないことですが、独裁国家に生きていると映画「マトリックス」のような錯覚を覚えるはずです。
もとはEUが始めだしたEV推進の道ですが、中国共産党は実にうまくそれを利用しました。
EUが「EVこそ地球温暖化対策のポイント」なんて言ってしまったせいで、少なくともEU諸国は後戻りできなくなっています。

「策士策に溺れる」を体現していますね。

中国は国家予算(と思われています)をジャブジャブ新興EVメーカーにつぎ込み、あり得ないような低価格で海外へ中華EVを輸出していて、言い出しっぺのEU域内の自動車メーカーがピンチに陥りました。
さすがのEUも「電気自動車が中国政府から不公正な補助金を受けている」として、中国製のEVに関税を課す決定をする始末です。
当の中国国内はというと、無理なEV促進策が市場や利用者の利便性を損ねていて、その未来は明るさが見えていません。

EVの未来がどうなるのか現実的に考える

EVの将来

なぜEVの推進に急ブレーキがかかったかといえば、そもそも不便なものを政治主導で売りつけようとしたからです。
完全に市場原理を無視したことで、売れる未来はなかったとさえ言えるのかもしれません。
とはいえEVはダメかといえばそんなこともなく、ここから先のEVについて予想図を考えてみましょう。

日本で現実的なのは軽バンのEV化

EVの弱点といえば価格の高さと充電問題ですが、街中の配送を担う軽バンであれば一定数の普及が見込まれます。
ただ、未だに高い購入価格とバッテリーの劣化問題を解決しないことには、商用車としては支持されないでしょう。
ちなみに軽自動車のEVとして発売された日産・サクラは、購買年齢層の70%以上が50代から上の世代で、持ち家の地方在住者で遠くに車で出かけない層が中心のようです。
今のリチウムイオン電池が主役のうちは難しそうですが、日本の自動車メーカーが鋭意開発中の全個体電池の完成に期待します。

やがて棲み分けができるはず

今あるEVの弱点は将来にわたって完全解決できないもので、特に充電時間の長さに関しては物理的に不可能だとさえいえます。
ではEVが全く普及しないのかといえばそうでもなく、ニーズさえ合っていればEVという選択肢も視野に入ってくるでしょう。
そもそも無責任な政治家などが新車の100%をEVにするなどと非現実的なことを言うから混乱したのであって、車の選択は消費者に委ねるべきです。

EVを買うかどうかを決めるのは、あくまで消費者だという事実を忘れてはいけません。

もしEVが劇的に増える未来があるとしたら、EVの普及率が一定数超えたところで考えられるガソリンスタンドの減少局面かもしれません。
そうなってくれば車の所有率も下がってしまい、日本が三流国に成り下がっているでしょう。

極端な罵り合いは不毛だと知りましょう

EV化の過程で見られた論争の多くは、EVに対して100%肯定するか全否定するかの不毛な罵り合いでした。
なぜこのようなことになったかといえば、やはり政治主導で自動車市場を歪めようとした政治の責任が大きかったといえるでしょう。
EVは必要だと思う人が買えば良いだけの話で、それの良し悪しは個人的な価値観に委ねられるべきです。
「不便なものをあえて買う」という選択肢を安易に否定すべきではありません。

まとめ

日本の車好きの中では圧倒的に否定的見解が多いEVですが、それは”押しつけ”に対する反発なのかもしれません。
それは2010年に日産がリーフを発売したとき、今ほど罵詈雑言が飛び交っていなかったことからも明らかです。
政治家は嘘つきだらけなので、少なくとも車選びは余計な情報に惑わされることなく冷静に考えることが重要です。

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